PEOPLE & LIFE

家族と暮らす、を大事にする。珈琲の仕事。
珈琲てんのき。

珈琲てんのき (東京/八王子)

日日の点が繋がる。
家族も暮らしも、珈琲も仕事も、
繋がりが広がりになって、そして豊かになる。
つまりは'幸せ'に向かって生きたい、と思うのです。

2025.07.19

今回は、東京高尾で無人販売や催事を中心に活動していらっしゃる珈琲てんのきの中村天紀さんにお話伺います。

ここで皆さん、「無人販売!?」と思った方もいらっしゃるのではないでしょうか。暮らしの中で色んなアイデアや工夫が感じられる中村さんには、珈琲のこだわりと共に、暮らしを豊かにする仕事の仕方や家族を大事にする生き方についてもお聞きしました。沢山のトピックがあって、それが一つに繋がっていく物語がありました。是非最後までご覧ください。

以下 T:珈琲てんのき 中村さん /  M:マスミツ / NCRNeji Coffee Roaster / 取材日:2024年2月
イラスト:村林タカノブ

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M
中村さんに、初めてご挨拶したのは、珈琲焙煎機の注文がWEB STOREから突然あったので(普通は何か問い合わせがあったり、質問があったりする)、ご確認のお電話をした時だったと思います。

その時に「僕、週末ロースターなんです。」と一番最初にお聞きしたのが、とても印象に残っています。他に平日の仕事も持ちながら、週末は珈琲の活動を。そんな週末ロースターという言葉が新鮮で。

T
そうですね。はじめて電話でご挨拶と「週末ロースター」の話をしたのは、マスミツさんがロースターキャップについて気にかけてくださり、キャップの使い方や効果などを教えてくれた時です。焙煎機が届いて数日後だったと思います。嬉しかったですね!実は今、シフト制になり不規則な勤務ですが、週に1回ペースでの焙煎は継続しています。週1ロースターになりました(笑)!

笑顔で出迎えてくれた中村さん。珈琲豆無人販売所の前で。

 

M
ところで、中村さんはコーヒーはいつから飲むようになりました?僕は高校卒業して初めてのアルバイト先で、大人ぶって飲めないコーヒーをブラックで飲んだ、、というのが最初でした。

T
そうなんですね!私は気がつけば子供の頃から珈琲が好きでした。ゴールドブレンドに砂糖とクリープを入れて飲むのを母方の実家で覚えてよく飲んでいましたね。母親の友人にインスタントコーヒーを作るために夜遅くの到着まで待っていたことがあります。私が誰かのためにはじめて珈琲を作ったのがこの時だと思います。なぜかこの記憶は頭に強く焼きついていますね。充実感満足感があったんでしょうね。

中学生になった時に床屋さんで珈琲を出してくれたこと、冬の犬の散歩中に甘い缶コーヒーを飲んだこと、珈琲にまつわる記憶はしっかりありますね。大学4回生の時にブラックで飲めるようになって珈琲店を巡るようになり自分でドリップも挑戦し始めました。

 

M
小さい頃からの珈琲の記憶。好いですね。
それから中村さんは、コーノ式にも入塾したんですよね。それ程、コーヒーに熱心だった?

T
入塾のキッカケはコーノ式の抽出を極めたい一心でした。正しい点滴抽出を知りたかったんです。

2009年、社会人1年目のとき、当時通っていた珈琲店でコーノ式珈琲ドリップ教室に参加しました。点滴で一雫落ちるたびに生き物のように豆が膨らんでいく様子や味わいに魅了され、その場でコーノ式の器具一式を購入しました。しばらくは納得のいく抽出ができずにいましたが、細々と続けていくうちに珈琲好きの妻と出会い暮らし始め、妻に点滴でじっくり丁寧に珈琲を点てることが暮らしの一部分になりました。妻はいつも美味しいと言ってくれましたね。最初はお互いに自分の器具で珈琲を作り合っていましたが、いつの間にか私が珈琲の担当になっていました。妻の友人へのおもてなしでも珈琲を点てていました。

点滴抽出でコーヒーを点てて下さいました。

 

M
‘誰かのために珈琲を淹れることが、再び奥様との暮らしから始まったのですね。珈琲を’淹れる’ではなく’点てる’というところが中村さんらしい。。

コーノ入塾後はいかがでしたか?

T
塾では抽出について、本や動画では伝えきれないことまで吸収できました。器具の置き方や自分にあった道具選びの大切さといった抽出環境を整えることは大きな収穫でした。同じ思いを持った仲間とのつながる環境も有難いものでした。自分が成長するために環境を整えることが大切だと学びましたね。

とても印象に残っているのは「お湯と粉(珈琲豆)が仲良くする環境を整える」ということです。「珈琲色のお湯ではなく、珈琲を抽出する」とも教えてもらいました。珈琲豆からいかに効率よくしっかりと成分を抽出するか、そして雑味なくいかにクリアな味わいにするか、そのための点滴抽出であり、コーノ式なのだと分かりました。自分のために美味しい珈琲を抽出することはもちろん、誰かのために美味しい珈琲を抽出することが本当に楽しくなりましたね。簡単に珈琲を抽出できる機械もたくさんありますが、誰かを思い、自分の手を使い、時間をかけて、珈琲を点てる「手と間」が私たちの暮らしに馴染んでいましたね。

今では、コーヒー抽出のワークショップをするまでに。丁寧なセッティング。

 

M
それでは珈琲の抽出から焙煎に興味を持ったのですか?

T
それが、コーノ珈琲塾では抽出と焙煎の2つを必ず学ぶことになっていました。私は抽出を学ぶことを目的に入塾したので、もともとは焙煎のことは知識も興味もまだなかったんです。中深煎りってどれくらい?シティってフルシティって何?というレベルでした笑。

でも、その機会に焙煎のことを勉強してみると私にとって良いことばかり!抽出だけではなく焙煎も含めて自分の珈琲を表現したいと思うようになりました。

 

M
(とにかく美味しい珈琲を淹れたい、という強い気持ちが色んなことを前に進める原動力だったのですね。)初めての焙煎はいかがでしたか?

T
初めての焙煎は講師の方のいう通りに機器を操作していき、なんとか煎り上げることができました。焙煎指導のおかげで自分の手を使った初めての焙煎豆は新鮮でモコモコと膨らむのが見ていて楽しく、美味しくて嬉しくなりました!自家焙煎で新鮮で高品質なのに経済的!珈琲好きには嬉しい!一緒に受講した方に豆のシワがしっかり伸びてキレイな仕上がりと言われ、それも何だか嬉しくなりました。焙煎の工程も奥深く面白い!焙煎は私にとって本当に好いこと尽くしでした!

これまで市販品や他の方の焙煎豆で抽出の表現しかできていなかったのですが、焙煎にも自分の珈琲の表現の幅を広げたい、塾の講師陣と同じように自家焙煎をして自分で抽出して珈琲を自分自身で表現したいという気持ちがますます大きくなりました。

漠然と将来は珈琲のお店を開きたいと思っていた気持ちも、『自家焙煎店としてやりたい』とはっきりとしてきました。

 

地域のイベント出店の景色。

 

M
コーノ塾で2度目の焙煎実習の機会があり、自分でこのくらいと焙煎度を決めて焙煎したのですが、言われるままに扱う機器の操作、秒単位で変化する焙煎、煎り止めタイミングの葛藤、やり直しのきかない一発勝負に対応できず思い通り行かなかったんですね。

なぜ思い通りにならなかったのかも分からない、機器操作の意味を理解できない、当然ですが知識と経験が不足しているから学ぶ必要がありました。塾のアドバイザーから知識と経験を積むなら手回し焙煎をすすめてもらいました。一方で塾長からは手回しは難しいと言われましたが、難しいと言われると余計にワクワクして!自分の手で挑戦したくなりましたね。焙煎を人から教えてもらうのではなく、時間はかかるかも知れませんが失敗も成功も自分自身の手で焙煎しながら経験し、知識を積み上げていきたい、自分のチカラで焙煎を極めていきたいと思いました。そこから手回し焙煎機に絞って探し始めました。

 

M
自分のチカラで!自家焙煎ならぬ自力焙煎を志したのですね。

T
おっしゃる通りです(笑)!

一方で、少し話が珈琲からそれますが、私たちは2人で育児休職をしていた時、今後の働き方について考えていました。長女を出産してから、こどもとできる限り一緒に過ごしたいけれど、共に不規則な勤務で共働きのため通勤や仕事により自分たちが望むこどもとの関わりができていないと感じたこと、同じ頃幼児虐待などのニュースを頻繁に耳にするようになり自分たちだからこそできることはないかと考えたことから、妻は育児休職後はタイミングをみて会社を退職し、家族との時間を大切に過ごしつつ、自分たちができることでこどもとおとなの役に立ちたい、そして心豊かに暮らしたいと思うようになりました。この理想と思いが手回し焙煎機を購入し自家焙煎を始めるタイミングと重なり、私たちの仕事としての珈琲活動がちいさな産声をあげたのだと思います。私たち家族はチームになりました。

 

毎年の家族記念写真。年月を重ねると子供たちの成長も見えます。

 

M
なるほど。育児と珈琲活動の豊かな両立、気持ちを向けたのですね。

T
まずは2人で相談し、物置になっていた部屋を珈琲部屋にしようと育児をしながら片付けを始めました。今思えばこの片付けは家の環境、暮らしの環境を整える第一歩になっていたように感じます。焙煎を始めるにあたっては環境を整えることの繰り返しでした。角地で目の前が公園という立地と広いベランダは有難かったですね。排煙のダクト、豆を冷やす冷却器、風除けや照明の設置など自分たちで整えていきました。(後に冷却器を譲り受けたり、室内焙煎に変えたときもその都度焙煎によりよい環境を整えていきました。)ぎゅうぎゅうになっていた私たちの日常、暮らしに自分たちの手で、時間を使って少しずつ余白をつくることができてきました。

環境を整えて迎えた初火入れの日。家族に見守られながら初めて手回し焙煎をしました。しかし火力の加減が分からず、煎り上げに時間がかかったり、終盤の予想以上の煙に驚いたり、作業の動きもぎこちなく、今どの段階にいるのかも分からない、「焙煎」というよりは「豆を焼いて茶色にした」というような初体験になりました。いい思い出ですね。それから知識と経験が乏しい中で関係する書籍やネット情報を読み漁り、動画を見ては繰り返し焙煎して、知識と経験を行ったりきたりしながら気づきと学びを得ていきました。0歳の子どもと添い寝しながら知識を得て、おんぶしながら焙煎して経験を積むほど(笑)のめり込んでいました。おんぶの息子は焙煎機を回しているうちに毎回寝てくれて。豆のシャンカシャンカという音が心地よかったのでしょうね。そうしているうちに少しずつ焙煎のことがわかるようになりました。手を使い、時間をかけて焙煎した珈琲豆、コーノ式でじっくり丁寧に抽出した珈琲。焙煎の「手と間」、自家焙煎珈琲の「味わい」、焙煎した珈琲豆の香りに満たされる「空間」を家族で分かち合える暮らしができてきました。

ベランダでのおんぶ焙煎。初めはコリンズのロースターも使っていました。

 

M
家族の時間を実感しながらの、珈琲焙煎だったわけですね。

T
そうやって、中々の量の豆を焙煎していたので、焙煎しては近隣の方を中心に親族知人へおすそ分けをしていました。近隣の方へは焙煎の音や煙について事前のお知らせも兼ねて珈琲豆を持って挨拶して回りました。おすそ分けした珈琲豆が美味しくなければ、特に反応は返ってこないと思っていましたが、「美味しかったよ」のお言葉と一緒にお礼の品もいただくようになり、物々交換のようなコミュニケーションが生まれました。コロナ禍でしたが、地域でのつながりやコミュニケーションが以前より増えていきましたね。おすそ分けをしたことで、パッケージや梱包、お客さまとのコミュニケーションの手段や内容、販売の方法など開業する前に自分たちでいろいろと試して経験できたことはよかったなぁと思います。カタチあるものをつくる経験はもちろん、相手の好みや本音の聞き出し方といったコミュニケーション、召し上がり方の傾向といった情報などのカタチのないものを手に入れた経験に手応えを感じていました。自分たちの手と時間をかけて何かを生み出している、分かち合うことで他者に貢献できている、これまでには感じたことのない豊かさを感じることができました。この経験が無人販売をはじめる原動力になっていきました。

 

 

エントランス入り口半分のスペースに出来たばかりの無人販売所に、コーヒー豆を並べました。嬉しい景色。

 

無人販売所は住宅地の中ながら、眼の前には公園もあり、緑の多い環境。

 

M
無人販売!なるほど、この流れから無人販売だったのですね。

(このお話は特に皆さん詳しくお聞きしたいと思いますので、vol2として別話にしたいと思います)

てんのきさんの珈琲活動は、いくつかのタイミングを経て合わさっていったのですね。

Neji Coffee Roasterを選んでくださったことについても改めてお聞きしても良いでしょうか?

T
某焙煎機メーカーの手回し焙煎機を使ってきましたが、開業に合わせて大容量の焙煎機を新調しようとしていました。ちょうどその頃、抽出した珈琲に雑味エグ味を感じるようになってしまいました。焙煎の際、熱量が不十分で豆が生焼けになることから生じるものと分かり、何度も何度も試行錯誤を繰り返しましたが改善されず、完全にスランプに陥ってしまいました。もともと容量を増やすことを目的に新しい焙煎機を検討していましたが、開業までにスランプを乗り越え、安定して美味しい珈琲豆を焙煎できる焙煎機を選ぼうと考えました。

NCRは百番珈琲さん(PEOPLEの記事にもあります)の投稿で知ってから、Instagramで度々拝見していて、私は蒸気機関車のようなカッコよさと人間味のような温かみを感じる姿カタチが特に好きでした。また機能的で、鉄製のハンドメイドプロダクトというストーリーにも好感を持っていました。NCRにはたくさんの魅力がありますが、特に「鉄による安定した蓄熱」と「ロースターキャップの使用」によりスランプを抜け出せるのではないかと期待しました。3.2mm厚の鉄板による熱伝導や蓄熱の良さと、キャップにより内圧を高め、豆の水分を使った蒸らしの環境のおかげで、豆の中までしっかりと熱が入り、ムラも生焼けもない、ふっくらと安定した仕上がりになる、妻にも相談して当時の私は藁にもすがる思いでNCRを購入し、美味しい珈琲豆を焙煎しようとしていましたね。

 

新しくNCRとロースターキャップも導入。

M
藁にもすがる思いだった!?知りませんでした。

N
レンタルでお試しせずに購入しましたので、実際に自分で焙煎するまで正直不安はありましたが、届いて焙煎してみると説明の通り、豆の中までしっかりと熱が入り、ムラなくふっくらとした珈琲豆に煎り上がりました。抽出して飲んでみると、生焼けの嫌な味がしない珈琲に仕上がっていました!美味しかったですね。やっとスランプを脱出することができました。それからはキャップをする時間は少し長めになりましたが、基本的にNCRの説明書どおりに焙煎しています。スランプの経験から毎年夏の間は焙煎前の生豆をクーラーボックスに入れて冷やしておき焙煎時に与える熱量を増やす、気温の低い朝のうちに焙煎するなどして生焼けを防ぐように工夫しています。それにこれまでうまく焙煎できなかった浅煎りをきれいに美味しく焙煎できるようになりました。焙煎の幅が広がったことが嬉しかったですね。NCRの「蓄熱」と「キャップ」にとても助けられています。

NCRのおかげで、私たちが提供したい日日の「点」を照らすような、暮らしに馴染む珈琲をお届けできるようになりました。焙煎する度に私の手に馴染み、私たちの暮らしに馴染んでいくような感じでした。開業後は生豆を月に約20キロのペースで焙煎しています。頼りがいのある相棒であり、仲間であり、私たちの仕事、活動に欠かせない存在ですね。家族のように大切な存在でもありますので、使用後にグレープシードオイルを薄く塗ってメンテナンスをしています。鉄製のNCRが少しずつ少しずつ表情を変えて育っていく、唯一無二の私たちのNCRに育っていくことを愉しんでいます。室内焙煎に切り替えた際に、仲間にしたかった専用鉄脚台を迎え、さらに愛着が深まりました。

 

M
キャップがあることで、ダンパー機能のある手回し焙煎機になったのはNCRとしても大きな出来事でした。ロースターキャップのご感想までお聞きできて、それから課題解決のお役に立てて本当に嬉しいです。

T
焙煎は五感を頼りに、豆の声を聴いて、豆の表情を見て、豆との対話を重ねています。焙煎をして思ったのは「珈琲豆を焙煎すること(珈琲を抽出することも)」と「子どもの育ちを支援すること」は似ているということです。そこで大切なことは、子ども(あるいは珈琲豆)が育つ「環境を整えること」と「信じて任せること」だと考えるようになりました。植物のタネが自分のタイミングで発芽するまで、私たちは土の環境を整えながら見守るように、私たちは環境を整えることで子どもたちと珈琲豆がもともと持っているチカラを引き出したい、チカラを発揮するまで信じて任せたいと考えて向き合っています。

 

一つ一つを丁寧に説明してくださる中村さん。現在の焙煎室には整然と珈琲道具が並んでいる。

 

M
暮らし方についてもお聞きしても良いですか?

中村さんのコーヒーの活動の背景には家族との豊かな時間を感じます。奥様、子供達、家族みんなで参加することによって、’週末’の活動も楽しい時間にしているような。これまでのお話を伺っても納得です。

仕事のあり方(社会との接し方)、家族のあり方、暮らし方。この三つが大きなトピックになっているのですね。

T
そうですね。本当に育児休職が大きな転機になりました。実は私は1人目のときは育児休職を取得せず仕事を選び、取得を約束していた2人目のときも妻と相談の上で一度仕事を選びました。その後再度妻と相談し、息子が6ヶ月になった頃から私も休職を7ヶ月間取得することに決めました。私は会社員として世の中の大きなシステム(組織や階層、型、しくみのようなもの)社会の一部として他人に軸を置き、肩書きや他人の評価を気にして、会社での自分の立場にこだわって生きていたと思います。家事育児をしてきましたが、今思うと「妻を手伝う」感覚だったのかもしれません。休職に入り、通勤電車に乗らず職場に行かず、自然や季節の移ろいを感じて、自宅で家族とたくさんの時間を過ごしていくうちに、自分の軸の居場所を「システム中心の暮らし」から「自分中心の暮らし」に変えることができました。それからは自分に軸を立て、家族を大事にする、自分が人として成長するなど自分が幸せで豊かな在りたい姿で、自分の人生の主人公として主体的に生きるようになりました。家事育児も「妻を手伝う」ではなく「妻と分かち合う」に変えることができたのだと思います。

コーヒーの仕事と活動は、私たち家族が分かち合い心豊かに暮らす土台となっていて、家族4人がチームで楽しく営んでいます。やんわりと役割は私は焙煎、妻は販売、娘は画伯、息子は味見と賑やかしで、家族がチームとして横でつながり、一緒に時間と場所、活動を分かち合っているような感じです。何か機能的に仕事ができるかどうかではなく、家族それぞれの存在そのものが役割のように感じています。さらに感謝したり励ましたり、時には意見をし合い、家族の気持ちや思いも分かち合うことで一緒にいて心地よい、温かく豊かさを感じる自分たちの居場所になっていますね。

こうやってやるから、そのうちお手伝いお願いねー。

ロゴマークは娘さんが描いたもの。
妻の存在が大きいです、と中村さん。

 

M
中村家の珈琲活動には、子供達も参加!なのですよね。

T
自宅で予約作品の受け取りがあるとき、呼び鈴が鳴ると私たちに続いてこどもたちもお客さまをお迎えします(時にはこどもたちの方が先に出たり)。一緒にいて子どもの手で商品を渡したり、お代をいただいたり、会話をしたり、人との関わりを楽しんでいてくれているようです。この前は近所のおじさんに「うちの珈琲は美味しんだよ!」と宣伝もしていました(笑)。学校や幼稚園でも珈琲屋さんの話をしているようです。自分たち家族のことを伝える、伝わることで、お店すなわち私たちが認められることを喜んでいるように感じます。特に画伯の長女はたくさんの人にロゴやパッケージイラストをかわいいと言ってもらい、自分の存在を認められ、自分の居場所があることが嬉しいんだろうなと思います。最近は絵を描くことは少なくなりましたが、「私も珈琲を点てたい!」と言ってくれます。息子は珈琲部屋に入ってきて「焙煎したい!」と言って焙煎機を回したりしています。2人とも頼もしいです。子どもたちがてんのきを自分事に考えてくれて分かち合えることは嬉しいですね。

週末など出店のある時はできる限り一緒に参加して楽しんでいます。はじめての出店は息子が1歳半のときで、このときはみんなで出店しました。しかし子どもたちも小さくて、いつもみんな一緒というは難しかったですね。一緒に出店できなかった時はお土産を買って帰って、家で分かち合っていました。やっと最近は家族みんなで一緒に参加できていて、出店者としても参加者としても家族みんなでイベントを楽しんでいます。子どももエプロンをして一緒に準備や店番、後片付けもしてくれることもあります。子どもたちと一緒に活動しているといろいろな気づきや学びがあって面白いんですよね。子どもたちには楽しく自分らしく活動をする親の姿を間近で感じてほしいなぁと思っています。大人になること、自分の未来に希望を持ってほしいと思っています。

 

M:
もう一つ、麦茶の販売についてもお聞きしても好いですか?

これは以前に僕がお話した麦茶焙煎からでしょうか?皆さん面白そうというのですけど、実は他に実現してみた方いらっしゃらないのです。頂いた麦茶は本当に香ばしくてとても甘かった!

T:
有難うございます。マスミツさんが麦を焙煎されているのはInstagramで以前から知っていました。焙煎機ドラムが2つ並んでいてかっこいいなぁ、いつか自分も同じようにやってみたいなぁと思っていましたね!そのうちひょんなことから偶然もう一つのNCRを手に入れることができ、NCRを2台愛用する願いが叶いました。一つを珈琲豆用、もう一つを米や麦などの穀物用にして、麦の焙煎をスタート出来るようになりました。素材はふるさとである青森のもち麦をみつけて仕入れましたので、次に焙煎方法を探してみましたが、ほとんど情報が見つからなかったので、珈琲豆の焙煎方法をそのまま麦にも使うことにしました。手探りで焙煎を進めてみたところ、思いがけずべっこう飴のような香ばしくて甘い余韻を楽しめるむぎ茶に仕上がりました。麦の焙煎度合いとしては中煎りでしょうか、一度もハゼることなく煎り上げています。正直はじめは仕上がりが安定せず、手探りの状態が長く続きましたが、焙煎回数を重ねるうちに、攪拌が影響を与えることに気づき、高撹拌を実践していくと仕上がりが安定してきました。珈琲の焙煎の知識と経験がいきましたし、反対に麦の知識と経験が珈琲の焙煎にもいきています。時間はかかってでも自分の手でやることは大きな収穫を得られた体験だったと思っています。

お客さまにも好評ですが、家族からも好評で、こどもからむぎ茶が飲みたいと言われると嬉しくなりますね。素材を仕入れて自分たちの手で生み出したものを自分たちの体にとりいれて分かち合えるのは、とても豊かなことだと感じます。麦の次は籾付き玄米を焙煎し黒焼き玄米茶も家族で愉しみつつ、豊かさを分かち合うために販売をしています。

 

自家焙煎の麦茶は味も香りもとても甘い。冷たくしてもとっても美味しい。

こちらは黒米茶。弱火から中火くらいで約1時間15分ほど。
じっくりゆっくり丁寧に「手と間」をかけている。

 

 

M:
やりたいこと、どんどんと湧いてきているのですね。

それでは最後に、これからのコーヒーの活動について、やってみたいこと、またコーヒーの活動枠にとらわれず、こうあったら良いな、ということがありましたら教えてください。

T:
余白のなかった私たちの暮らし、焙煎をはじめ、NCRを使いはじめ、自分たちの手を使う、時間をかける「手と間」を取り入れることで自分たちが主体的にいきいきと日常を愉しむ暮らしを整えることができました。そこから「分かち合うこと」で、日常がさらに深まり、幸せで心豊かな暮らしにつながっていくと気づきました。「豊かさ」とは「分かち合うこと」なのかなぁと思います。今後は無人販売と出店のほか珈琲の抽出や焙煎のシェア会を通じて、生きることや暮らしのことを交えながら、「手と間」の大切さと「分かち合うこと」の素晴らしさを伝えたいと思っています。最近自宅の一室にてんのきサロンを作りました(色々と検討を重ねた末、行き着いたのが自宅でした)。teachではなくshare、教えるではなく提案する、伝える、分かち合うことをしていきたいですね。珈琲の抽出や焙煎のほか、私たちの暮らしにある精油、アドラー心理学や心のこと、さらには覚えたてのスパイスカレーも(笑)!私たちの暮らしに取り入れた「手と間」は取り入れて終わりにせず、「分かち合い」をしていきたいと思います。

また昨年末から「トーキョーコーヒー(︎✴︎)」の拠点として活動を始めました。2人の子育ちを経験してみてすべての子どもと関わる大人の役に立ちたいと始めた珈琲てんのきと共通している思いが多く、思いをカタチに拠点の旗を立てました。まずは「愉しむ大人、愉しむ子ども」を目指して、私たちらしく「分かち合い」の活動をしていきたいと思っています。

ゆくゆくは私たちらしく、やりたいことで日日の「点」を照らすこと、分かち合うこと、そのような願いを叶えられる広い場所を作れたらいいなぁと想像と期待を膨らませています。分かち合った「点」と「点」がつながり、心豊かを感じられるように、かけがえのない日日、主体的に生きることで種を蒔いていこうと思います。

✴︎『トーキョーコーヒー』は大人が‘楽しみながら’学び合い’、日本の教育システムを進化させる為のムーブメント。全国各地に拠点を構え活動している。

M:
一人の珈琲好きの青年が、珈琲を仕事にして、家族を大事にして、沢山の幸せの分かち合いをしていく。そんな’てんのき物語’でした。
珈琲が連れて行ってくれるまた一つの景色だなあ、としみじみ思います。珈琲って’伝えること’ですね。

有難うございました!